土は何も語ろうとはしない。

物事の根源と向き合うことは、自分と対峙することでもあります。連載「The root.」では、普段は無意識の中にあるような事象を取り出し、深く観察することで生まれる感覚の言語化を試みます。

 
_SDI3289.jpg
 

土に触れた最後は、いつのことだろうか。

都市の土はコンクリートの下で息をひそめ、

野菜についていたはずの土もきれいに落とされて、

土との結びつきは見えにくくなっている。

そうした土と訣別した社会においても、

生物と無生物をつなぐ、天と地の境界ともいうべき場所では、

途方もない時間軸の輪廻がおこなわれている。

土は、物理的、化学的、生物的過程によって変化し続ける

とても複雑で、強い内部相互作用を持つ生態系である。

土は、生きることの始源でもある。

しかし、何も語ろうとはしない。

ざく、ざく、と土の上を歩く。

土というダイナミックな自然の産物があって、

その上に今、自分がいる。


土は、誰の足元にもあるのだ。

見えにくいものへの畏敬の念を、忘れさえしなければ。

文 増村 江利子

写真 伊丹 豪

THE ROOT.SIRI SIRI